実質GDP改定値の上方修正により、米国経済の底堅さが再確認され、主要株価指数は史上最高値を更新する場面がありました。
一方で、8月雇用統計は市場予想を大きく下回り、労働市場の減速懸念から「FRBが想定より早期に利下げへ転換するのでは」との観測が広がりました。
AI関連株の反落や高値警戒感が重しとなり、週末は調整色が強まる一方、ゴールドは過去最高値を更新し、安全資産としての存在感を再び示しました。
1. 経済指標の動き
経済指標の動きとして「実質GDP改定値」と「雇用統計」を紹介します。
実質GDP改定値
今週発表された第2四半期の実質GDP改定値は速報値から上方修正され、米経済が依然として堅調であることを示しました。
とくに個人消費や設備投資が底堅く推移しており、景気後退への懸念は一部で後退しています。
ただし、同時に発表されたコアPCE価格指数が加速したことで、インフレ圧力が依然として強いことも浮き彫りになりました。
これにより市場では「FRBが利下げに動くタイミングは予想以上に難しい判断を迫られる」との見方が強まっています。
雇用統計(9月5日発表、8月分)
- 非農業部門雇用者数:前月比 +2.2万人(市場予想 +7.5万人)
- 失業率:4.3%(前月 4.2%から悪化)
- 平均時給:前月比 +0.3%、前年比 +3.7%
今回の雇用統計は、市場予想を大きく下回る結果となりました。特に雇用者数の伸びが予想外に低かったことで、労働市場の減速感が鮮明になりました。
また、6月分の数字が下方修正され、2020年以来の減少へ転じたことも注目点です。
これにより「FRBが早期に利下げへ舵を切る可能性」が意識され、株式市場は発表直後に売り優勢となりました。
ただし、賃金の伸びが比較的堅調であったことから「景気後退ではなく軟着陸のシナリオ」との見方も残されており、市場の解釈はわかれています。
2. 株式市場・インデックスの動き
S&P500とNYダウ・NASDAQの推移を紹介します。
S&P500の推移
- 9月3日:6,448.26
- 9月4日:6,415.54
- 9月5日:6,481.56
S&P500は週初にかけて堅調に推移し、史上最高値を更新する場面もありました。
しかし、雇用統計の発表を受けて一時下落。その後は安定を取り戻しましたが、市場全体には「高値圏での不安定な均衡」が漂っています。

NYダウ・NASDAQの推移
ダウ平均はGDP改定値を好感して上昇したものの、週末にかけては利下げ観測を織り込みつつ高値警戒感から伸び悩みました。
NASDAQはAI関連株の決算を受けて下落基調となり、テクノロジー株中心の投資家心理にはやや警戒感が広がりました。

3. 個別銘柄の動向
今週の注目はAI関連株です。エヌビディアをはじめとする主要半導体メーカーの決算発表は、成長は続いているものの市場の高すぎる期待を完全には満たさず、失望売りにつながりました。
これによりハイテク株全体に調整ムードが広がり、NASDAQの重しとなりました。
一方、天然資源関連株はインフレ懸念を背景に底堅く推移しました。
とくにエネルギーや鉱山関連セクターには資金が向かっており、リスク回避とインフレヘッジを兼ねた投資対象として注目されています。
4. 投資方針とスタンス
投資家にとって 9/1~9/7の動きは「リスク資産と安全資産のバランス」を再考させるものでした。
ゴールドは過去最高値を更新し、インフレ局面における最有力ヘッジ資産であることを改めて証明しました。天然資源株は、株式市場全体の調整リスクを抑える「守りのセクター」として引き続き保有する価値があると考えられます。
FRB政策に関しては、雇用市場の減速を受けて利下げ期待が高まる一方、インフレ指標の強さがその時期を遅らせる可能性もあります。投資家は二面性のあるシナリオに備える必要があります。
5. 来週の注目点
来週はCPI(消費者物価指数)の発表が控えています。
インフレ率の伸びが鈍化すれば、市場は利下げ期待を一段と織り込み、株価には追い風となる可能性があります。
しかし、インフレが強い結果となれば「高金利長期化」懸念が強まり、株式市場に波乱をもたらす可能性もあります。
また、主要企業の決算発表も続き、ハイテクや消費関連株の動きが投資家心理を左右するでしょう。
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