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株価と債券価格の逆相関とは?同時下落リスクと実務での活かし方

株価と債券価格の逆相関とは?同時下落リスクと実務での活かし方

株式と債券は資産配分ではじめに考える代表的な資産です。

一般論として「株価が上がると債券価格は下がりやすい」とされています。しかし、その前提が崩れる局面では、分散投資の効果が大きく損なわれる恐れがあるでしょう。

そこで本記事では、株式と債券が逆相関になりやすい理由や、同時に下落・上昇するパターンを紹介します。

顧客のポートフォリオを提案する金融実務家が、相関構造をどのようにリスク管理に活かすかを考える材料としてご覧ください。

目次

株価上昇と債券価格下落のメカニズム

一般論である「株高・債券安」となる理由は、大きく以下の2つです。

  • 景気拡大と金利上昇
  • 投資家のリスク選好の変化による資金シフト

景気拡大と金利上昇

景気が拡大すると、企業業績の改善期待が高まり、株価は上昇しやすくなります。将来の利益成長が意識されると、株式の需要が高まるためです。

一方、景気拡大はインフレ懸念をともなう場合が多く、中央銀行は景気の過熱を抑えるために金融引き締めへ傾きます。

具体的には、政策金利の引き上げや長期金利の上昇です。ここで重要なのは債券価格と金利(利回り)は、逆方向に動くことです。

  • 金利が上昇する
  • 新発債は高い利回りで発行される
  • 既発の低クーポン債は魅力が薄れ、価格が下落する

その結果、景気が拡大すると「株高・金利高・債券安」になりやすく、株式と債券が逆相関に見えます。

投資家のリスク選好の変化による資金シフト

投資家のリスク選好が変化し、資金が比較的安定した利回り債券から値上がり期待の高い株式へシフトされると、株価上昇と債券価格の下落につながります。

景気が堅調で株価が上昇している局面では、投資家はより高いリターンを求めてリスクを取りやすくなるためです。このとき資金が株式へと移ることにより、既発債の売却が増えるため、債券価格がさらに下落します。

景気拡大・金利上昇・リスクオンがそろった局面では、株式と債券の逆相関が強く意識されます。

リスクオンとは

投資家がリスクを取って、株式などのリスク資産の保有を増やす状態を指す。景気や企業業績に対する期待が高まっているときに見られるムード。

株価上昇と債券価格下落の関係が崩れるケース

株価が上昇すると債券価格は下落する「逆相関の関係」が崩れ、分散投資の効果が弱まるケースがあります。

そのケースは以下の2つです。

  1. 株価と債券が同時に下落する
  2. 株式と債券が同じ方向に上昇する

本章では逆相関の関係が崩れるケースとその原因を紹介しますので、現在、分散投資を行っている方はリスクヘッジのためにチェックしてみてください。

1. 株価と債券が同時に下落する

環境次第では株式と債券が同時に下落し、分散効果が機能しない局面が生じます。この場合、ポートフォリオ全体のドローダウンが想定以上に深くなりやすくなります。

ドローダウンとは

運用資産が直近のピーク(最高値)からどれだけ減ったかを示す下落幅のこと。どの程度の損失に耐える必要があるかを見るための重要なリスク指標。

原因①:高インフレ・スタグフレーション環境

景気があまり強くなくても、エネルギー価格や人件費などのコスト要因でインフレ率が高止まりする場合があります。

いわゆる景気後退と物価の持続的な上昇が同時進行する経済状況(スタグフレーション環境)です。この局面では、次のような力学が働きます。

  • 企業コストの上昇で利益率が圧迫されて株価が低下
  • 将来のキャッシュフローを高い金利で割り引くため、株式の理論価値が低下
  • インフレ抑制のため、中央銀行は利上げを継続
  • 金利上昇が続き、既発債券の価格がさらに下落

その結果、株価と債券価格が共倒れする局面が生じます。世界的な利上げが続いた2022年はその典型例でした。

原因②:流動性パニックによる同時下落

リーマンショック級の信用不安が発生すると、投資家はあらゆる資産の価値を疑い、現金を優先します。具体的には次のようなことが起こります。

  • 信用不安の拡大によるリスク資産の大規模売却
  • 現金化を急ぐ動きから、安全資産とされる国債すら売却の対象
  • 国債利回りが急上昇し、債券価格も下落
  • 株価急落と債券安が同時進行

上記のような局面では、通常クッションとなるはずの債券が十分な下落抑制効果を持ちません。

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「安全資産だから大丈夫」という前提が、短期的には崩れます。

2. 株式と債券が同じ方向に上昇する

株式と債券が同時に上昇するとき、同じ方向に上昇する局面も存在します。中長期的に続くのではなく、一定期間だけ生じることが多いパターンです。

原因①:景気回復初期の過剰流動性相場

景気が底打ちした直後や金融危機後の立ち上がり局面では、中央銀行が大規模な金融緩和を維持していることが多いです。

このとき政策金利は低水準に据え置かれ、市場には豊富な流動性が供給されます。この環境では次のような動きが同時進行します。

  • 景気回復期待から企業業績の改善が織り込まれ株価が上昇
  • 政策金利がまだ低く、債券利回りも低水準で安定
  • 金利上昇への警戒が本格化する前ならば、債券価格の高値維持

その結果、株価も債券価格も上昇する局面が一時的に生じます。投資家のリスク許容度と、中央銀行の緩和スタンスが同方向に働いている状態です。

原因②:低インフレ・低金利環境での相関変化

インフレ率が低く、かつ安定している局面では、市場金利の変動幅は小さくなります。このとき債券価格を動かす要因は、金利以外の要素へと移りやすくなります。

債券価格を動かす要因
  • 金利ボラティリティが低く、債券価格は大きく崩れにくい
  • 株価は企業収益や成長期待に連動して上昇する可能性がある
  • 相関構造は、金利よりもリスクプレミアムの変動に左右されやすくなる

そして株式と債券の相関が薄くなったり、一定期間、正の相関に転じたりする場合があります。

相関係数は固定的なものではなく、環境に応じて変動する量だと理解することが重要です。

金融実務家が押さえておきたい3つの視点

金融実務家が株式と債券の相関を前提にポートフォリオを構築するときは、次の3点を押さえましょう。

スクロールできます
項目内容
逆相関の前提条件・景気拡大とインフレ懸念、金利上昇、リスクオンがそろったときは「株高・債券安」の構図
・「株高・債券安」の前提が崩れたときは、逆相関も弱まる可能性
同時下落局面の想定・高インフレやスタグフレーション、流動性パニックなど環境では、株式と債券の同時下落によって分散効果が大きく低下
・最大ドローダウンや耐えられる期間のシミュレーションが必須
相関の変化を前提にした設計「株式と債券を混ぜれば安全」という説明ではなく、マクロ環境と政策スタンスを踏まえ、どのような局面で相関が変化するかを顧客と共有することが重要

株式と債券を活用した投資戦略に関しては「国債投資の戦略:大きな利益を狙うときと利益を超えた価値を追求するとき」で解説しております。

まとめ

逆相関は「固定のルール」ではなく「変化する前提」です。株式と債券は、長期平均には逆相関が観測されることが多い一方で、局面によっては同方向に動くこともあります。

重要なのは「株と債券は逆相関だから安全」という固定観念を持たないことです。マクロ環境や金融政策、投資家心理の変化によって、常に動いている前提として扱う必要があります。

  • 何から手をつければよいか迷っている
  • 自分にはどのような投資のやり方が合うのか
  • 株と債券を含めて、どのようなポートフォリオなら安心して続けられそうか

このように感じた方は、自分で情報収集を続けるよりも、今の資産状況や考えを整理しながら、プロと一緒に「自分に合った投資スタイル」を見つけるのがよいでしょう。

まずはカジュアルな相談でもOKです!自分だけで悩みを抱えるより、一度プロの視点を取り入れてみてください。

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監修者

1981年生まれ。2009年に保険業界へ転身し、2013年に証券外務員資格を取得。あいざわ証券・SBI証券のIFAとして活動後、2016年にエストニアで起業し金融商品仲介業を取得。2020年に日本でセミナー会社を設立、投資教育事業を展開。2023年、日本金融庁より投資助言業を正式に登録し、海外金融に携わり続けている。現在は全国・世界各地の個人投資家にアドバイスを行い、クライアント数は約10,000人にまで拡大。

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