海外積立の手数料体系
まず理解してほしいのは、投資家の資産を実際に運用するのは保険会社でなく、ファンドであるということです。
本来ファンド投資をする場合は信託報酬と呼ばれる、各ファンドが設定した手数料を払わなければなりません。しかし海外積立のシステムを利用してファンドに投資する場合、保険会社がファンドに代わり同率の手数料を取るので、それぞれのファンドの信託報酬を気にする必要はなくなります。
インデックスファンドであろうが、アクティブファンドであろうが、どのファンドに投資しても支払う手数料は保険会社の手数料のみとなります。
アクティブファンドの信託報酬が2%前後であるのに対して、海外保険積立の手数料は低くても3%ほどで、手数料は高く見えるかもしれません。しかし、その手数料が常にボーナスによって幾分か相殺されます。
海外保険積立の利益を公式で表すと
私たちの利益= ファンド益 ー 手数料 + ボーナス
となります。これを念頭に置きながら手数料を見ていきましょう。
どの海外の会社においても、手数料は下記の三つの合計であり、
これは日本の信託会社が取る手数料体系とほぼ同じ形と言えます。
-
プラン管理手数料
カストディアン(資産を管理している銀行)に支払う手数料。〇ドル/月という形で固定で取られる。
-
ファンド管理手数料
保険会社と保険会社を通じてファンドに払う手数料、総資産、元本から(どちらかは会社による)一定の%/年で取られる。
-
口座管理手数料
保険会社の事業維持のために保険会社に払う手数料。
手数料体系は大きく二つのタイプに分けられます、一方が複雑なので、少し幅を取って、説明したいと思います。
-
A 積立元本から固定の%が引かれていくタイプ(主にインベスターズトラスト・プレミアトラスト)
これは単純で、次の二点に集約されます。
a-1積み立てた元本に対してかかる。
a-2固定の手数料は、○○年継続すると長期継続割引で低くしてくれる。
(最初○%で、何年後かどれだけ下げてくれるかは、各保険会社によって違います) -
B初期口座総額の〇〇%という割合によって、満期までの手数料が決まってくるタイプ(RL360、メティス、他)
これが非常に複雑です。初期口座期間中の計算と、その後の期間の計算を分けて行わなければなりません。
初期口座とは、減額・支払い停止・部分引き出し等ができない期間です。詳しくはこちら
RL360社を例に取って実質年利をシミュレーションで出してみましょう。
・月払い…500米ドル
・初期口座期間…2年
《口座管理手数料》… 6%/年
《ファンド管理手数料》…1.5%/年
(計算の簡素化のためプラン管理手数料は入れないことにします)
《口座管理手数料》が1.5%なので、1.5%÷12ヶ月で、0.125%が総資産から毎月引かれます。
さらに《口座管理手数料》毎月0.5%総資産から引かれていきます。
なので実質の毎月の手数料は
0.125%+0.5%=0.625%となります。
単純に×12ヶ月すると7.5%が初年度の手数料となります。なので年利7.5%の運用益がでて、ようやく手数料の-を相殺してゼロにできるのです。
初期口座期間終了後の計算
2年間の初期口座期間終了時に、仮に総資産が12,000米ドルだったとします。初期口座の6%の手数料720ドルが《口座管理手数料》として毎年取られた後に、さらに総資産から《ファンド管理手数料》1.5%/年が引かれる、という計算になります。
では3年目の手数料はどのようになるのでしょうか。
まず初期口座12000ドル+三年目の積立500ドル/月×12ヶ月(その年の運用益0%と仮定)=18000円(総資産)の1.5%=270ドルがファンド管理手数料として引かれます。次に口座管理手数料720ドルが引かれる計算になり、合計手数料は990ドルとなります。これは総資産の5.5%にあたります。どうでしょうか。初期口座に比べて2%減りましたね。
このように初期口座に対する《固定の口座管理手数料》を課す会社の場合、手数料のうちに固定の部分があるので、総資産に対する手数料率は積立期間の経過とともに低くなっていきます。
このように初期に重くのしかかる手数料を、スタートボーナスなどの名目で各保険社は補おうとしています。
ちなみに手数料合計が、日本の○○証券の口座から海外アクティブファンドに投資する、平均的な手数料である2%になるには、総資産が144,000ドル程度になるのを待たなければなりません。(年利7.29%で運用ができれば20年目で到達できます)このことから、満期設定を20年以上にする覚悟がなければ、RL360社を選ぶべきではないと言えます。