最新の記事

株価と債券価格の関係

株価と債券価格の関係

Financial Level.【Fundamental 2】

一般的に、『債券価格が上昇すると株価は下落し、債券価格が下落すると株価は上昇する』傾向にあると言われます。

(もちろん、『株価が下落しているときに債券価格は上昇し、株価が上昇しているときに債券価格は下落する』とも言えますので、このあたりは鶏と卵の話)

この株価と債券価格の関係、株や債券に投資をされている方にとっては、投資のタイミングやポートフォリオのバランスを考える上で知っておいて損はない話かと思いますので、今回はなぜこうした関係になっているのか、その背景について整理していきたいと思います。

株価と債券価格の関係

まず、株と債券の実際の推移について、ロイターにわかりやすい図がありましたので、ご紹介したいと思います。

出典:ロイター

濃い青の方のグラフが株価(S&P500)で、水色の方が債券(米10年債)の利回りになりますが、白の矢印が示すように、長期的に見た場合、概ね連動して動いていることがわかります。

債券の方は価格ではなく、利回りで示されていますが、債券は「価格が下がると利回りが上がる、価格が上がると利回りが下がる」という関係(詳しくは「金利と債券価格の関係」を参照)にありますので、株価と債券の利回りが正の相関にあるということは、株価と債券価格は逆相関、つまり、「債券価格が上昇すると株価は下落し、債券価格が下落すると株価は上昇する」関係にあるということになります。

株価と債券価格が逆相関になる理由

さて、事実として、株価と債券価格が逆相関の関係にあるということは先に見たとおりですが、ではなぜこうした関係になるのか、次の2つの側面から解説していきたいと思います。

  • 株の期待収益率と投資家のリスク選好
  • 中央銀行による金融政策
株の収益率と投資家のリスク選好

例えば、景気サイクルのなかで、株式市場が過熱し始め、高値警戒感が高まってくるようなタイミングでは、すでに株価は高くなってしまっていますので、そこからさらに株価が上昇し、大きく儲けられる可能性はあまり高いとは言えず、むしろ下落していくリスクが高まってきます。

そうすると、投資家としては、期待収益率が低下し、リスクが増している株式を買うより、リスクが低く、株の収益率が低下した分、相対的に利回りの魅力が増している債券に資金を移動させる動きが生じます。

つまり、株式を売って、債券を買う動きですので、結果、株価が下落し、債券価格が上昇していくということになります。

また逆に景気の回復期や好況期を考えてみると、その前の後退期により株価が比較的低い水準にあると思われますので、今後さらに株価が上昇していくことが期待される、つまり、株式の期待収益率が高い状況になります。

そうすると、利回りの低い債券よりも、多少のリスクをとっても高い収益率が期待できる株式に資金を移していくという動きにつながっていきます。

これが、債券価格が下落し、株価が上昇していく局面になっていきます。

中央銀行による金融政策

「政策金利」という言葉をニュースなどで耳にされたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、中央銀行はこの政策金利を用いて、通貨の流通量をコントロールしています。

簡単に言えば、政策金利が下がれば、お金が借りやすくなり、お金の流通を促進します。逆に政策金利が上昇すれば、お金を借りた場合の利子が増えますので、お金の流通が抑制されるという形です。

さて、ここで景気の状況として、好況でどんどん株価が上がっていくような状況を考えてみると、中央銀行は株式市場の過熱感を警戒し、バブルにならないように引き締めを行います。つまり、政策金利を上げて、市場の通貨の流通量を抑制するような金融政策が採られます。

金利が上がっていくと、利率が低い既発の債券は相対的に市場での魅力が低下していくため、取引価格が下がっていくことになり、好況で株価が上昇する一方、債券価格が下落するという状況になります。

また、逆に景気が悪くなり、デフレになると、金利を引き下げる、いわゆる量的緩和という政策が採られます。これは金利を下げて、消費や設備投資をしやすいように市場のお金の流通量を増やして、景気を刺激していくための政策になります。

景気が悪い状況ですので、株価は下落していきますが、その一方で、金利が下がってくると、相対的に既発債券の利率が魅力的なものになってきますので、債券が買われる、つまり、株価が下落し、債券価格が上昇するという状況になります。

まとめ

『債券価格が上昇すると株価は下落し、債券価格が下落すると株価は上昇する』

長期的に見れば、株価と債券価格には逆(負)の相関関係があるということを見てきました(ただし、短期的には必ずしも当てはまらない)。

そして、その背景として、景気サイクル(景気循環)の移り変わりによる株式の収益期待やリスク選好といった投資家心理、また中央銀行による金融政策が影響していることをお伝えしました。

なんだか分かりにくいなという方は、とりあえず、株価と債券価格には負の相関関係があるということだけ、まず押さえておいて頂ければ良いかと思います。

他方、関心をもたれた方は、景気サイクルや金利について知っていくとより理解が深まるかと思いますので、以下の記事も併せて参考にして頂ければと思います。