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米中貿易摩擦◆前編◆

英語ではUS-China Trade War(=米中貿易戦争)と呼ばれている

米中貿易摩擦

について、皆様も耳にしたことはあるのではないでしょうか。

2018年1月に、アメリカが太陽光パネルと洗濯機の全輸入品に追加関税を課すと発表したことを皮切りに、両国が関税の引き上げ・拡大などの報復的措置を次々と行っています。

この米中貿易摩擦の背景と、経済への影響を見ていきましょう。

 

◆トランプ大統領の保護貿易政策◆

トランプ米大統領は、2016年に大統領当選するにあたり、保護貿易政策を掲げて支持を集めました。

どういうことかというと、不公平な貿易を是正し、国内産業の保護・雇用の拡大・国際収支の改善(輸出を促進)を米国民に約束したのです。

実際に、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)を脱退し、NAFTA(北米自由貿易協定)を米国に有利な条件に修正させ、WTO(世界貿易機関)から脱退する姿勢も見せています。

そして、中国に対する強硬な通商交渉を打ち出しています。

まず2018年初頭に、トランプ政権は中国産を含むすべての太陽光パネル、洗濯機、鉄、アルミニウムに対して追加関税を課しました。

ここからアメリカと中国の報復的追加関税合戦がはじまります。

□第1弾 2018年7月~
米国:中国産半導体・産業用ロボット・自動車など818品目計340億ドルに追加関税
中国:米国産大豆・牛肉・水産物・たばこ・自動車など545品目計340億ドルに追加関税

□第2弾 2018年8月~
米国:半導体・ゴム製品・鉄道車両、産業機械など284品目計160億ドルに追加関税
中国:燃料・鉄鋼製品・自動車・医療機器など333品目計160億ドルに追加関税

□第3弾2018年9月~
米国:紙製品・革製品・家具・家電・機械類など5745品目計2000億ドルに追加関税
中国:LNG・中型航空機・宝飾品・酒など5207品目計600億ドルに追加関税

更に、2018年11月に2670億ドル規模の追加関税を実効するとトランプは示唆しましたが、12月に米中が報復的貿易措置の「休戦」の合意を交わし、2019年4月まで協議が続きました。

しかし、協議の進展の遅さに反発し、トランプは再び2019年5月に2000億ドル分の輸入品に課していた10%の関税を25%に引き上げます。

また米中の報復的貿易措置のいたちごっこが続いたのち、2019年7月から米中協議は再開し、2020年1月には第1段階の包括的な貿易協定を結ぶに至りました。

 

◆対中強硬姿勢の理由◆

以上の貿易摩擦の前提として、トランプの保護貿易政策があることはわかりました。

貿易赤字を削減することにより、米国内の雇用や投資を拡大させ、2020年の大統領選再選を目指して支持率の上昇を図る、というのがひとつの目的です。

もうひとつ、アメリカが中国に対して強硬姿勢をとる理由は、中国に対して経済・技術面での優位性を保つためです。

特にスパイ容疑やサイバー攻撃に対して中国政府を強く批判していることや、HUAWEIの貿易ブラックリスト入り、そして直近では、トランプが中国企業のTikTokを米国で禁じることを示唆していることなどから分かるように、アメリカは中国のハイテク産業の拡大を最も警戒しています。

国家主導で産業の育成を推し進めている中国が、自国の優位性に対する脅威となる前に、ダメージを与える手段として通商交渉を利用しているのです。

 

 

次回、『中国貿易摩擦◆後編◆』では米中貿易摩擦の世界経済への影響を見ていきます。