▼日本での諸問題

海外保険の普及と犠牲者

少しだけ裏話です

なぜ海外保険は日本人投資家にこれほど普及しているのに、多くが甚大な損益を出しているのでしょうか。

これを語るには海外保険と法律をめぐる問題を話さなければなりません。

海外保険を含む、日本の金融庁を通さない投資について、法律はどのように言っているかというと

国民に投資する自由はある。ただし日本の市場を荒らされると困るので、海外の業者が金融庁許可を得ずに、営業、紹介することは禁じる

というのが現状です。

このサイトを読まれている方は、営業するのは禁じているのに、プレゼンテーションを受けたことがある、営業されて契約書類を書いたという方が多いと思うので驚かれるかもしれませんが、一応禁じられているのです。

営業紹介とは何を指すかというと、説明して勧めて仲介手数料をもらうことです。(紹介者の手数料体系についてはこちら)
これも当然のように横行しています。

そして、海外保険で騙された、という形でかなりの件数が消費者センターに上がっていること、すなわち多少ではない損害を投資家が被っている原因は何かというと

海外投資性商品が複雑な金融商品であるにもかかわらず、証券外務員資格のない者が販売できる

という点にあると私は思っています。

日本の金融庁の監視下にあり、取引所や窓口で販売されているものは、国内国外の商品にかかわらず資格が要りますが、日本の金融庁の許可を取らないものは、いかに商品の構造が複雑でも、無資格で紹介し、手数料を得られます

欧米の金融商品の構造は日本のそれより遥かに複雑です。目論見書や運用実績書一つにしても、日本人向けに作られたものは、なるべく細かい金融用語を使わないようにし、説明項目も減らしています。

少し過剰に聞こえるかもしれませんが、私の主観では日本の金融市場は欧米よりも50年は遅れています。ちなみに、投資信託がイギリスで初めて作られたのは1850年、そして日本においては、その100年後の1950年です。

無知識無資格な人がどうして海外投資を勧めるのか。投資性の商品で運用実績も見せることができるものが、面倒な証券外務員資格なしで販売でき、手数料がもらえるからです。

なので証券業界出身でなく、人脈を多く持っている人が(ネットワークビジネスで影響力のある人などがよくやっていたそうです)営業マンに多いのはそのためです。

(『どうして海外金融商品の営業マンは、嘘をついても罰されないのか』も合わせてご参照ください)

その営業マンが持っている人脈を使い売りつくした後はどうするか。

売りつけた人に営業をしないか、と声をかけ、その人の人脈を使おうとします。

そして一人契約したら、いくら払う。月何人契約できたら月収はこれくらい増えるなどと、甘く囁きます。
そうして営業マンの下に何人もの営業マンができていきます。

これは本来、日本IFAの所長職の立場になるのですが、資格の必要がなく、金融庁に届け出をする必要もないために、下位営業マンをたくさんつけ、彼らの販売手数料から何割かを中抜きし、自分は何もせずに多額の収入を得るという仕組みを、簡単に作ることができてしまうわけです。
(まさにネットワークビジネスみたいですね)

これと、虚偽の説明が安易である点も相まって、膨大な数の契約者が=被害者となりました。

海外保険商品は、本来利点が多くあるものであるにもかかわらず、です。

それらの営業マンは悪いと思いますが、営業マンに手数料を払っている海外IFAも、営業マンが自分の裁量で勝手に手数料中抜きをして下位営業マンを作っている現状を、全く管理していなかったことにも責任はあると私は思っています。

昨今は、下位営業マンにも、本社に個人情報を登録させ、コンプライアンステストを受けさせる会社が増えてきましたが、虚偽の説明が業界から減る気配は、いっこうにありません。

営業マンが手数料を多くとるために、投資家に30年の長期継続を強いるなど、悪条件で契約させられている消費者ばかりみます。

とはいえ、そんな手数料の虜になった人たちばかりでなく、高い研究意識を持ち、投資する喜びを感じて欲しいという志で動いている営業マンに、会ったことがないわけでもありません。

しかし、不十分な説明と虚偽の説明については重罰を与えないかぎり、この現状は変わらないでしょう。